建築工事
新築工事
一戸建ての新築工事は地盤調査から建物完成までいくつかの工程が連続する建設工事です。家そのものを建てる工法には違いがあっても、地盤調査、防水工事、断熱工事など共通している部分もあります。一戸建てが完成するまでの大まかな流れは次の通りです。
地盤調査
基礎工事を始める前に地盤調査会社による地盤調査が行われます。地盤強度などその土地の地盤についてまとめた報告書に従い、基礎の設計、地盤補強工事などが実施されます。
地業工事
基礎を支えるための栗石、割栗石、砕石、杭などを設置する部分を地業といいます。地業工事は以下のようなものがあります。
遣り方(やりかた)
施工の際の目安にするために、杭などを打って構造物の位置を表示します。
割栗石の敷き詰め
12~15cmほどに割った石材、割栗石を基礎の下に敷き詰めます。地盤を強固にし、建物の荷重を基礎から地盤に均一に伝えるために実施するものです。
捨てコンクリート
その後の作業を正確に行えるようにするため、コンクリートを打設して水平面を作ります。この捨てコンクリートの上に部屋などの位置を線を描いて決定する「墨出し」を行います。
基礎工事
基礎の土台部分を作る基礎工事には次のような流れで行われます。
配筋工事
捨てコンクリートの上に鉄筋を格子状に組みます。
コンクリート流し込み
鉄筋の縁を木製の型枠で囲い、コンクリートを均一に流し込みます。その後、コンクリートの中の空気を抜く作業を行い、ビニールシートを上から敷いて数日間養生させ、基礎の完成です。
建て方工事
主要な構造材を組み立てる工事を建て方工事といいます。木造住宅ならば土台の据え付け、柱、梁、胴差しの設置など以下のような作業工程があります。
基礎バッキン
基礎と土台の間にはさむゴム製品、バッキンを取り付けます。基礎と土台の間に隙間を作り、床下に湿気がたまりにくくします。
1階工事
土台の上に柱を立てていき、柱と柱を梁や胴差しでつなぎます。2×4工法の場合は壁パネルを使用します。天井を作って1階の完成です。
2階工事
1階の天井を床として、2階に柱を立て、柱と柱を梁や胴差しでつなぎます。2×4工法の場合は壁パネルを使用します。
屋根工事
建物の完成形にだいぶ近づいてきてきたところで、いよいよ屋根の取り付け作業に入ります。
構造用合板施工
屋根の下地となる構造用合板を施工します。
防水処理
構造用合板の上に耐久性のある特殊な防水シートを隙間なく貼り防水処理を施します。雨漏りがしないように入念なチェックが必要です。
屋根材施工
防水処理が完了したら屋根材を設置します。屋根材には瓦、スレート、金属薄板などがあります。
外壁工事
屋根工事同様に外壁工事も防水が重要です。
防水処理
外壁下地に耐久性のある特殊な防水シートを貼っていきます。
外装材施工
防水材シートの上に外装材を施工していきます。この作業が完了すると、いよいよ建物の外観がわかるようになります。
断熱工事
建物の外観ができたところで内部の仕上げに入ります。まず、快適な住環境を作るために断熱工事を施します。
硬質ウレタン吹付け
柱と柱の間に硬質ウレタンフォームを吹き付けて充填します。硬質ウレタンフォームはさまざまな素材と自然に接着するので断熱層を作るのに最適です。吹付けが終わったら内壁面に合わせて表面をカットして、その上から内装材や化粧材を施工していきます。
ポリスチレン保湿板
床下にポリスチレンフォーム保温板を隙間なく施工します。床下から冷気が室内に入ってくるのを防ぎ、基礎を断熱し、住宅の断熱性と気密性を向上させます。
設備工事
窓ガラスの他、キッチン、洗面所、トイレなどの設置物の工事を行います。設置物はそれぞれの家の設備仕様に応じて異なります。たとえば、温水床暖房設備を取り付けるならば、床下暖房温水配管、各種配線などが必要になるでしょう。
内装工事
建物内部の床、壁、天井の仕上げ工事を行います。塗装、クロス貼り、フローリング貼りなどが行われます。戸、ふすま、障子などの建具を取り付けていよいよ建物の完成です。
外構工事
以上のように外装、内装、設備のすべての工事が完了したところで、植栽などの外構工事が実施されます。他の工事と同時に行う場合もあります。
増築工事
増築工事とは建物の床面積を増やす建築工事のことです。建て替えなどより費用を節約できることが特徴ですが、増築の内容によってコストは大きく異なります。増築工事の費用の目安や注意点などを解説しましょう。
増築工事の費用
増築工事にかかる費用は木造住宅よりも鉄骨住宅、1階部分よりも2階部分の方が高くなります。これは、2階部分を増築する際には1階部分の補強工事も必要となるためです。また、増築する面積が大きいほどコストも高くなります。
増築費用が高くなるケース
次のような増築工事の場合は、単位面積あたりの目安以上に費用が高くなりがちです。
・増築部分が2階
・水回りの工事が発生する
・住宅設備の購入が必要
・補強工事を伴う
・内装や外装を行う
増築費用が安くなるケース
逆に次のような増築工事ならば、費用は比較的安くすむことが少なくありません。
・増築部分が1階
・木造住宅の増築
・ベランダやバルコニーを設置するだけの増築
・庭が広くて増築しやすい
増築工事の具体例
増築工事にはさまざまなタイプがあります。よくある増築工事の具体例と平均的な費用、注意点などは次の通りです。
ベランダやバルコニー
現状の窓の形状を変えることなくベランダやバルコニーを取り付ける場合、30~50万円で増築することができます。ただし、窓によってはベランダの脚を設置するスペースがないこともありますし、スペースはあるものの構造的に耐えられないケースも考えられます。このような場合は補強工事などが必要となり、さらに金額がかさむので注意しましょう。
トイレ
トイレに必要なスペースは1坪弱ですが、水回りということもあり、コストは120万円前後と安くはありません。住宅の間取り、配管工事の手間、新たに設置する便器のグレードなどによっても多少異なります。
寝室
現在の寝室を3畳ほど広げたいとなった場合、ただ広くするだけではなく、既存の床・壁・天井などと同じ作りにする必要があります。内装部分をすべて変えるケースもあるでしょう。内装部分にどこまでこだわるかによっても多少違いますが、平均して190万円ほどかかります。
和室
和室は洋室と比較すると畳を敷くなど内装にかかわる費用が必要になります。しかし、水回りの配管工事などはないので、8畳ほどを増築したとしても250万円程度と、トイレなどと比較すると単位面積あたりに必要な費用は安くなる計算です。
増築工事のメリット・デメリット
床面積を増やすならば建て替えという選択もあります。それでも増築工事を選択する人がいるのは、それなりのメリットがあるからです。一方、デメリットもあるので注意しましょう。
メリット
・建て替えよりもコストがかからない。
・現在の家に暮らしながら工事ができるので、引っ越しなどの必要がない。
・床面積10㎡以内の増築ならば確認申請不要。
・住環境の問題をピンポイントで解決できる。
デメリット
・コストをかけないと増築部分と既存部分に違和感が出てしまう。
・建物の状態によっては、できない増築工事もある。
・場合によっては補強工事などの追加工事が必要。
・床面積10㎡以上の増改築には建設確認申請が必要。
改築工事
改築工事とは床面積はそのままで間取りなどの変更を行う建築工事です。火災で滅失した建物や、家主の都合で取り壊された建物を、以前とあまり変わらない規模、構造で建て直す際などに行われます。改築工事の特徴や具体例などは以下の通りです。
改築工事と類似の建築工事との違い
改築工事は増築工事、改装工事、修繕工事などと混同されることがあります。それぞれどのような違いがあるのでしょうか。
改築工事
・床面積を変えずに間取りの変更を行う。
・トイレやバスルームの位置を変えるといった工事がある。
・2つの部屋を合わせて1つの大きな部屋にすることもある。
増築工事
・建物の床面積を増やすような工事。
・既存の建物を基礎部分から広げることもある。
・平屋を2階建てにすることもある。
改装工事
・床面積も増やさず、間取りも変更せず、ただ内装や外装などを変える工事。
・ペンキ塗り替え、クロスの張替えなどがある。
・畳の部屋をフローリングにするのも改装工事のひとつ。
修繕工事
・家の壊れた部分を直す工事のこと。
・雨漏り工事もここに含まれる。
・開閉しにくくなったドアの交換など、老朽化に伴う設備交換などがある。
改築工事の具体例
家のどこを変えるかによって、改築工事にはさまざまなパターンが考えられます。いくつかの具体例を紹介しましょう。
階段の移動
現在の階段を解体してそのまま他の場所に移動させるだけの改築工事ならば、部材費を節約できるので比較的安くすませることができます。およそ20~50万円ほどかかります。具体的な工程としては以下の通りです。
・階段解体
・階段再組み立て
・床と天井の補修
・天井の穴あけ
・電気配線工事
トイレの移動
トイレの位置を変える改築工事はおよそ2~5日が必要です。トイレの場所を変えるだけでも次のようなコストがかかりますが、もし、新しいトイレを設置するとなると機材費としてプラス5~30万円を見ておきましょう。
・トイレ、給排水管、排気用ダクトの設置と電気配線工事 約15~35万円
・キャビネットや棚の設置費用 約4~15万円
・トイレの壁や床の内装 約5~10万円
減築工事
減築工事とは、住宅の床面積を減らしてコンパクト化を図る建築工事のことです。たとえば、2階建ての2階部分を撤去するなどの方法があります。注意したいのは、間仕切り壁を取り払って部屋数を減らすだけのリフォームは減築工事には含まれないという点です。一方、2階の床を撤去して吹き抜けにしたならば、床面積は減少するので減築工事となります。具体的な減築工事としては、たとえば次のようなものがあります。
平屋の一部撤去
1階部分の建築面積を小さくすれば、それだけ庭を広くすることができます。採光、通風、近隣住宅との距離を確保し、より快適な住環境を導きます。
2階建ての全2階部分の除去
階段を除去することで高齢者の家庭内事故を防ぎます。ワンフロアーはバリアフリー化しやすいというのもメリットです。2階建ての頑丈な基礎のまま1階だけを支えれば良い状態となるので、耐震性の大幅な向上を期待できます。
2階建ての2階の一部を除去
子どもが独立して2階の子ども部屋が物置になっているような場合、2階の一部を減築するケースも少なくありません。2階の部屋の陽当り、通風などが改善され、開かずの間をなくすことで各部屋の片付けや掃除が行き届くようになり、家の長持ちにもつながります。
減築工事のメリット
わざわざお金をかけて家を狭くするのは無駄のように誤解されることもあります。しかし、減築工事には数多くのメリットがあり、リフォーム工事の中でも高い効果を期待できるものなのです。減築工事のメリットには次のようなものがあります。
家の維持費を軽減
家がコンパクトになれば光熱費などもそれだけ少なくなります。毎年の固定資産税も減築した床面積分だけ安くなるのも見逃せません。外壁塗装、内装リフォームなど、家のメンテナンスにかかる費用も安くすることができるでしょう。
耐震性向上
減築工事は家の重量を軽くします。重い家に必要な基礎のまま、上に乗っている部分が軽くなるわけですから、耐震性は高くなります。減築工事にあたって、設計段階から耐震性能にこだわれば、さらに耐震性を高めることもできるでしょう。
建て替えよりもリーズナブル
家を建て替えるにはまず古屋の解体費用の他、登記費用などの諸経費が200~300万かかります。また、新築費用は床面積30坪として坪単価50万円ならば1,500万円はかかる計算になります。このような建て替え新築よりも、減築工事は圧倒的にリーズナブルです。安ければ数百万ですむこともあります。
居住空間がライフスタイルに合致
4人家族で生活していた家で2人暮らしをするとなると、どうしても使わない部屋ができてしまいます。そういった部屋は物置になりやすく、片付けや掃除も滞りがちです。しかし、減築工事をすれば家全体の掃除も行き届きやすくなります。掃除の他、家事全般を行いやすいライフスタイルに合致した居住空間を作ることができるでしょう。
防犯性の向上
使用していない部屋があると、空き巣に狙われやすいといわれています。人の気配がしない場所をなくし、家全体を明るくして戸締まりの確認をしやすくすることで、防犯性を高めることもできるでしょう。
減築工事のデメリット
以上のように減築工事には数多くのメリットがありますが、デメリットもあるので注意が必要です。減築工事のデメリットは以下の通りです。
引っ越し・仮住まいが必要
生活上の支障がない減築で、そのまま家で生活しながら工事を行うことができる場合もあります。しかし、壁の撤去、屋根の葺き替え工事などが発生するケースでは、引っ越しや仮住まいが必要になるでしょう。ただし、建て替えの場合は最低でも半年かかりますが、減築工事ならば2~4ヶ月と比較的短期間ですみます。
荷物が納まらない
減築工事をした家に仮住まいから戻ったところ、なかなか荷物が片付かないという例も少なくありません。しかし、逆にいえば、減築工事をきっかけに、本当に必要なものを選別し片付ける機会にできるというわけです。
部屋が足りなくなる
子どもが独立した後の夫婦2人暮らしで、子どもや孫が帰省した際に対応できなくなるほど部屋を減らしすぎてしまう事例もあります。家族のイベントなども考慮しながら減築する範囲を決めることも大事です。
耐震補強工事
耐震補強工事とは既存の住宅の耐震性を向上させる建築工事のことです。特に1981年以前の旧耐震基準で建てられている住宅は必要といわれています。耐震補強工事の前には正しく住宅の耐震性を診断する必要もあるでしょう。耐震補強工事の注意点や具体的な事例は以下の通りです。
耐震診断のポイント
耐震補強工事の前に、まず、耐震診断によって住宅の耐震性を正しく把握する必要があります。耐震診断のポイントには次のようなものがあります。
地盤
建物はどのような地盤の上に建っているかによって耐震性が異なります。たとえば、山の斜面の造成地、海や河などの近くは地盤が弱く、耐震性が高くない可能性があります。ボーリング調査で地層の構造を調査するなど地盤調査がまず必要です。
建物の形状
耐震性は住宅の形状によっても異なります。一般的に正方形、長方形などの箱型の建物は地震に強いといわれています。一方、L字型、コの字型などの建物は地震のエネルギーが集中しやすい一点があり、打撃を受けやすい傾向があります。
建てられた時期
1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅は大規模な揺れで倒壊するリスクがあり、もっとも耐震補強工事を必要としているといっても過言ではありません。一方、2000年以降に建てられた新しい耐震基準にのっとった住宅は、壁の配置バランス、柱・筋交い等に使用する金属の種類なども決められています。
壁
壁は建物の耐震性を決定する重要な要素です。壁が薄く、壁に耐震用金具・筋交い・構造用合板などが設置されていない場合は、耐震性は低いといえるでしょう。
耐震補強工事の具体例
耐震補強工事にはさまざまな方法があります。いくつかの具体例を紹介します。
基礎の補強
基礎の部分が弱いと建物は地震に耐えられません。もし、基礎が鉄筋の入っていないコンクリートならば、鉄筋コンクリートを入れて補強します。また、鉄筋コンクリートを使用していてもヒビがはいっている部分があるならば、しっかりと改修しておかなければいけません。
シロアリ被害対策
建物の土台や柱がシロアリ被害を受けると、耐震性に問題が生じます。土台の取り替えや、柱の侵食された部分だけを新しくする根継ぎなどが必要です。新しい木材は必ず防腐、防蟻処理を施し、これ以上のシロアリ被害を防ぐようにします。
壁の補強
間仕切り壁を使用している場合、地震の揺れのような横から加わる力で倒壊しやすくなっています。間仕切り壁に筋交い、構造用合板などを取り付けて耐力壁にするのもひとつの耐震補強工事です。
屋根を軽くする
重い屋根は建物を倒壊しやすくします。たとえば、重い日本瓦を使用しているならば、軽いスレート瓦、金属薄板などに交換するだけでも耐震性向上が期待できます。
耐震補強工事の相場
耐震補強工事はどのような住宅に施すのかによって必要なコストは異なります。それぞれの相場は以下の通りです。
鉄筋コンクリート住宅
鉄筋コンクリート住宅の耐震補強工事にかかる費用は15,000円/㎡~50,000円/平方メートルが相場といわれています。
木造住宅
木造住宅の耐震補強工事にかかる費用はおよそ150万円です。ただし、1981年以前に建てられた住宅は工事しなければいけない場所が多いので、それより高くなる傾向があります。
部分的な耐震補強工事
耐震補強工事は住宅の一部分だけに施工することも可能です。ただし、特定の場所だけを補強しすぎて建物全体のバランスを崩すと耐震性を損なうことにもつながります。耐震診断に基づき、全体を見ながら工事をしていくことがポイントです。部分的な耐震補強工事には、たとえば次のようなものがあります。
・屋根の日本瓦を軽い素材に張り替える 約100万円(面積85㎡の場合)
・外壁の柱や土台に耐震パネルを取り付ける 約65万円
・壁に耐震パネルを打ち付ける 約25万円(1ヶ所あたり)